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チラシからはじまる物語【第9話】腹へりお父さん

チラシからはじまる物語【第9話】腹へりお父さん

「チラシからはじまる物語」15篇のストーリー

どこにでもありがちな家族の話、ありえない話。

ほろりと泣ける恋物語から、近未来の話まで、珠玉のストーリーをお届けします。

どの物語もチラシが重要な役割をはてしています。さて、そのチラシが人生にどんな影響を与えるのでしょうか。

あなたのお気に入りの作品に出会えるといいですね。

第9話は「腹へりお父さん」

酒のつまみに甘いものを食べる甘党の父。

父の食欲は止まらない。

チラシの記憶。

「第9話」腹へりお父さん

うちの父は、食べることが大好きだ。年がら年中、「腹減った」と言っては台所で食べ物を探している。

 「もー。お父さん。私の大福食べたでしょ」

 「食べたんじゃない、腹に入ったんだ」

お酒が大好きなのに、何故か甘党の父。酒のつまみに甘いものを食べるのだ。

 「いいじゃないか。また買ってくれば」

それが、父の言い訳。決して、謝ったりしない。

 「買ってこいったって、おみやげで貰ったものなのに…」

 「じゃあ、くれた人に美味しかったと伝えておいて」

本当にらちがあかない。本人には悪いことをしているという自覚はない。お腹がすいたから、あったものを食べてどこが悪いのか、理解できないのだろうな。

夕方、母がご飯をよそうために、炊飯器を空けて絶句する。

 「お父さん、またご飯食べたでしょ」

ご飯の減ってしまった炊飯器。これからご飯という時に、炊飯器にほとんどご飯が残っていない。いつものことだが、いつものように母が怒っている。

 「お母さん、面白いこと言うね」

父はどこふく風で知らん顔を決め込んでいる。まるでご飯が無くなったのは、自分のせいじゃないみたいに。

 「そんなに食べるとバカになる」

母は父にいつも言うが、そんな言葉くらいで父の食欲は止まらない。

 「お母さん、おかわり」

何事もなかったように、おかわりを要求するが、

 「食べたいだけ食べても太るだけです」

若干ぽっちゃりとした母に断られて、しょげている。

だが、父は食べたい放題食べてもスリムだ。不思議なくらいに。

そして、朝になると再び母の怒りが爆発する。

 「お父さん、また食べたでしょ」

夜、みんなが寝静まった頃、父は食料を漁るために台所に降臨する。夜ご飯でおかわりをさせてもらえても、もらえなくても、食料を探している。

 「腹が減って眠れないから」

それが、父の言い訳だ。

 「あんまり食べてバカになっても困ります」

母がどんなに言っても、

 「ご飯食べなきゃ死んじゃうよ」

そんな決め台詞を言っては、さらに母の怒りをかっている。

父の仕事は、トレーラーの運転手だ。早朝から夜まで働いている。夏なんか仕事から帰ってくると、「塩分補給」と言っては、ふりかけのごま塩をなめている。

仕事をしているから、お腹が空くのはしかたない、と思っていた。

ところが、ある日、父が倒れて病院に運ばれた。診断の結果は、「肝硬変の一歩手前」だった。もう、好きなお酒も飲めない、タバコもやめなきゃいけない、食事にも気をつけなければいけない。それなのに…、父は生活態度を何一つ改めようとしなかった。

例え病気になったとしても、仕事だけはしなきゃいけない。父はそう思ったのだろう。さすがにトレーラーの仕事は、辞めることになったが、就職活動を始めたのだ。

でも、何社受けても採用されない。父の字は、悲しいくらいにヘタクソで読みにくい。いつも母が代わりに履歴書を書いていた。

その履歴書のことで父と母が喧嘩している。

 「お母さんの書く履歴書のせいで合格しない」

 「それは、お父さんの人柄でしょ」

 「それになんだ、この趣味の欄に書いてあることは」

母が父の趣味として書いたこと。それは、「カラオケ」。父いわく、カラオケなんて恥ずかしいから書かないでくれと懇願しているのだ。

 「私の書く履歴書に文句があるのなら自分で書きなさい」

とうとう、父は母に見放され履歴書を自分で書き始めた。

だが、それでもどこの会社も雇ってくれない。

 「なんでダメなんだ」

履歴書を前に頭を抱える父。ふと、履歴書に目が止まった。そこには、父のみみずがはったような文字で、「肝硬変一歩手前ですが、よろしくお願いいたします」と書かれている。原因は、それだよ。そんなのじゃ受かるわけない。

仕事をするんだと、父は張り切っていたが、やはり病気には勝てない。医者にも仕事を止められ、ようやく就職活動をあきらめたようだ。

それなのに、病気になったからといって、食欲が落ちることはなかった。相変わらず、母に怒られながら、食べ放題をしている。

ある朝、母が不思議そうにコップを見ている。コップには透明な液体がなみなみと注がれている。

 「これ、なんだと思う?」

見てみると、水ではない。よく考えてみる。匂いをかいで、やっと答えにたどりついた。

 「もしかしたら、油?」

母が苦々しい顔をしている。

  「やっぱり油でしょ」

 「でも、なんでコップに油が…」

そこへ父が体をボリボリ掻きながら登場した。

 「いやーあ、変なもの飲んじゃったよ。ジュースかと思って飲もうとしたら、油だったよ。おかげで体が痒い」

お腹ばかり空かせている父が、緊急入院することになったのはその翌日だった。突然、トイレで倒れて、そのまま病院へ搬送されたのだ。

今までは好き放題食べていたが、これからは病院食だけになる。果たして、父は我慢できるのだろうか。病気も心配だったが、それも心配だった。

幸いなことに命に別状はないという説明だった。そのため、面会謝絶ではなかった。そして、父を見舞うための病院通いが始まった。これまで、痔と蓄膿の手術で入院したことのある父だったが、肝臓で入院するのは初めてだ。

6人部屋にいる父は、何やら一枚の紙を熱心に見つめている。

 「お父さん、来たよ」

声をかけても固まっている。何をそんなに熱心にみているのだろうか。

 「お父さん、変えを持ってきたよ」

紙袋から新しい下着を取り出し、汚れた下着をしまう。

 「おう」

やっと一言、発する。

 「うまそうだな」

父がじっと見ていたもの。それは、お寿司のデリバリーのポスティングされたチラシだった。午前中に来た母が置いていった、入院セットの中に紛れ込んでいたらしい。

 「元気になったら食べられるよ」

食い入るようにマグロを見つめながら、

 「じゃあ、出前を頼んでくれ」

と、無理な注文をつけてきた。病院に生ものを持ち込むことだってダメだって言われているのに、ましてやデリバリーなんて無理に決まっている。

 「売店で、好きなもの買ってあげるから」

父の目が輝く。やはり、病院食だけでは物足りなかったのだろう。

病院の売店には、デザートやジュース、お弁当、パン、入院で必要な日用雑貨なんかが売られている。売店のお姉さんは、ニコニコしていた。

父が、プリンに手を伸ばすと、お姉さんがすかさず言う。

 「どこの病棟に入院されていますか」

病棟名を告げると、笑顔が硬直する。

 「先生の許可は得ていますか?」

好きなものを買って食べるには、先生の許可がいる。それくらい常識だといわんばかりにドヤ顔をしている。

 どうやら父は、先生の許可なんかもらっていないみたいだ。でも、掴んでしまったプリンをどうしても食べたいらしい。うらめしそうに眺めている。

 「先生の許可? 俺が俺の医者だ」

どんなことを父が言っても、ダメなものはダメだった。野菜ジュースならという、お姉さんの言葉に私従うしかない。プリンがダメなのだから、当然、お寿司なんてとんでもない話だ。入院している限り、あきらめないと。人間、あきらめが肝心だ。

次の日から、面会に行くたびに父はお寿司のチラシに夢中になっている。食べさせてあげたいのは、やまやまだけど、あと少しの我慢だから。

 「ヨーグルトが食べたい」

隣のベッドの人が、面会の度にヨーグルトを持ってきてもらい、食べているという。

 「大きなヨーグルトをね、そのまま抱え込むようにして食べるんだよ」

羨ましそうに話している。わかった。ヨーグルトね。とりあえず、看護師さんに確認をすると、少しなら大丈夫という。早速、売店へ行き、小さいヨーグルトのカップを一つ購入して、父の元へと急ぐ。

 「ずいぶんと可愛らしいヨーグルトだな」

一言、余計なことを言いながら、父はヨーグルトに手をつける。でも、半分くらい食べて、「お腹いっぱい」とそれ以上食べようとしない。

 「お寿司だったら、全部食べられるけどな」

美味しくなかったのかな、でも、お寿司も酢飯で酸っぱいし、ヨーグルトも酸っぱいから、同じものを食べていると思って欲しかったな。でも、無理があるか。

だがそれから、日毎に父は弱っていき、しまいにはあれほど大好きだったお寿司のチラシすら見なくなってしまった。

そして、先生から父は肝臓がんで手術できないほど進行していると告げられた。命に別状がないという説明だったのに。なんで。

しまいには、ご飯もほとんど食べなくなり、歩くことさえできなくなった。

 「患者さんの好きなものを食べさせてあげて下さい」

看護師さんが今頃になって言う。でも、さすがにお寿司はまずいだろう。そこで、売店で買いそこなったプリンを購入して、父に食べさせる。

 「あぁ、美味しかった。もういいや」

一口しか食べない。

すっかり、体力が無くなってしまった父。痛み止めにモルヒネを使うようになった。

それから、3日後。先生から家族全員が呼ばれ、私たちに手を握られながら、父は旅立っていった。最後の言葉は、「にぎり」だった。私達が手を握っていたからか、寿司の握りのことか、真実は父しか知らないが。

父のお通夜がしめやかにおこなわれた。孫が横たわる父を見て、

 「おじいちゃんにご飯はいいの?」

と、聞いてきた。食べることが大好きだった父は、もうご飯を食べることなんて無いのに。

お坊さんのお経が流れる中、母はずっと泣いている。孫が、「ばあちゃん、泣かないで」とハンカチで母の涙をぬぐっている。その姿が、さらに涙を誘った。

通夜ぶるまいには、たくさんの天ぷらと父が食べたがっていたお寿司が並んだ。思ったよりも、大勢の人が来てくれた。料理が足りなくなるかと思うくらいだった。

妹がポツリと言った。

 「お父さん、賑やかなことが好きだったから。みんな、喜んで食べてるよ。きっと、お父さんも喜んでる」

そして、葬式の日。父のお姉さんが、真っ青な顔で意外なこと言う。

 「弟が夢に出てきた」

なんでも、お父さんが夢の中でとんでもない要求をしたらしい。

 「小皿を箸で叩きながら節つけて歌うのよ。寿司くれ、寿司くれって」

家から持ってきた、お父さんが見つめていたお寿司のチラシをひつぎの中に入れてあげる。今度は、天国で注文してね。もう、お腹いっぱい食べても、怒る人もいないだろうし、バカになることもないだろう。たぶん。だけどね。

それ以来、お寿司のチラシがポスティングされるたび、父の仏壇にそなえてしまう。父は、どんなお寿司が食べたかったのだろう。やはり、マグロかそれともウニ、いくら、それとも海鮮丼かな、どんなに思っても答えはでない。

父がいなくなってから、炊飯器のご飯が消えることも、夜に食材が消えることも、とっておきのスイーツが消えることも、なんにもなくなった。

でも、父との思い出だけは消えたりしない。いつまでも、お寿司のチラシとともに記憶に刻まれ続けている。

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